Logic Proボーカル編集入門|Flex Pitch・ノイズ除去・タイミング補正のやり方

Logic Proボーカル編集入門|Flex Pitch・ノイズ除去・タイミング補正のやり方


こんにちは、kawaharaです。

この記事では、Logic Proでのボーカル編集について、ピッチ補正(Flex Pitch)・ノイズ除去・タイミング補正の3つに絞って、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

イメージとしては、撮って出しの写真に「レタッチ」をしていくような感覚です。撮影(録音)がしっかりしていれば、あとからの修正も最小限で済みます。この記事では、難しい理論よりも「このボタンをこうすると、こう変わる」といった実践的な操作を中心に紹介します。

なお、この記事はLogic Proの「ボーカル編集」カテゴリの基礎記事です。まずはここで全体像と基本操作を押さえておくと、ミックスやエフェクト処理もスムーズになります。

この記事のゴールと全体の流れ

最初に、この記事のゴールと作業の流れを整理しておきます。

結論:ボーカル編集は「ノイズ → タイミング → ピッチ」の順番が基本

ボーカル編集では、ノイズ除去 → タイミング補正 → ピッチ補正の順番で進めるのが基本です。まず余計な音を減らし、次にリズムを整え、そのうえで音程を直すことで、処理が自然にまとまりやすくなります。

逆に、いきなりピッチ補正から始めてしまうと、後からノイズ処理やタイミング補正をしたときに、せっかく調整した音程が崩れてしまうことがあります。

この記事で学べること

この記事を読みながら実践すると、次のようなことができるようになります。

  • Flex Pitchを使って、外れた音程を自然に修正できる
  • ノイズゲートやEQを使って、気になるノイズを減らせる
  • Flex Timeでボーカルのタイミングをグリッドに揃えられる
  • 「やりすぎない」ボーカル編集のチェックポイントがわかる

それでは、具体的な操作に入っていきましょう。

Logic Proでのボーカル編集の全体像

まずは、ボーカル編集がどんな工程で進んでいくのか、ざっくりと全体像を押さえておきます。ここを理解しておくと、後から「いま自分はどこをやっているのか」が迷いにくくなります。

ボーカル編集は「片付けてから整える」イメージ

ボーカル編集は、部屋の片付けに例えるとイメージしやすいです。

  • ノイズ除去:床に落ちているゴミや使わないものを片付ける
  • タイミング補正:家具の位置を整える(リズムを揃える)
  • ピッチ補正:最後に飾り付けをして見栄えを整える(音程をきれいにする)

この順番を守ることで、後戻りの少ないスムーズな編集ができるようになります。

Flex Pitchでボーカルの音程を補正する

ここからは、Logic Pro標準機能のFlex Pitchを使って、ボーカルの音程を直す方法を解説します。

Flex Pitchをオンにする手順

まずは、Flex Pitchを使える状態にするところから始めます。

  1. ボーカルトラックのリージョン(波形)をクリックして選択します。
  2. キーボードのEキーを押して、「エディタ」を画面下に表示します。
  3. エディタ左上の「表示モード」から[トラック]タブが選ばれていることを確認します。
  4. 波形の上にある[Flex]ボタンをクリックし、ポップアップから「Flex Pitch」を選択します。
  5. 少し待つと、波形が「ブロック状の音符」に分割され、音程ごとにノートが表示されます。

これで、Flex Pitchでの音程編集ができる状態になりました。

ノートをドラッグして音程を補正する

Flex Pitchでの基本操作は、ノートを上下にドラッグして音程を動かすことです。

  1. 修正したい音(ノートブロック)をクリックして選択します。
  2. ノートブロックを上下にドラッグし、下に見える鍵盤(ピアノロール)の音程ラインに合わせます。
  3. ダブルクリックすると、そのノートを「最も近い正しい音程」に自動でスナップさせることもできます。

一つずつ耳で確認しながら、大きく外れているところだけ直すと、自然な仕上がりになりやすいです。

自然に聞こえるためのFlex Pitchの設定ポイント

Flex Pitchでは、ノートを選択すると下部にいくつかのスライダーが表示されます。ここでは、よく使うパラメータだけに絞って解説します。

  • ピッチ補正(Pitch Correction):音程のブレをどの程度まっすぐにするか。最初は30〜50%程度から試してみましょう。
  • ピッチトランジション(Pitch Transition):音と音のつながり方の滑らかさ。数値を上げるとポルタメントのように「ニュルッ」とつながり、下げるとカクッと切り替わります。
  • ピッチドリフト(Pitch Drift):ノートの頭・末尾の音程のクセを補正します。語尾だけ上がりすぎる・下がりすぎるときに少し触ると自然になります。

いきなり全部を触ろうとせず、「大きく外れている音を、近い音に寄せる」→「ピッチ補正を軽めにかける」くらいの感覚から始めるのがおすすめです。

ノイズ除去でボーカルをクリアにする

次は、ボーカルに乗ってしまったノイズ(息継ぎ音・環境音・マイクのサーッという音など)をできる範囲で減らしていきます。

録音前のノイズ対策(簡単にできるポイント)

編集の前に、録音時に気をつけるだけでノイズはかなり減らせます。

  • エアコンや換気扇など、常に鳴っている音はできるだけオフにする
  • マイクから口までの距離をだいたい10〜15cm程度に保つ
  • ポップノイズ(「ぱ」「ば」などの破裂音)対策に、ポップガードを使用する

編集でノイズを消すより、録音段階で抑えておくほうがずっと楽です。

Noise Gateで小さいノイズをカットする

Logic Pro標準のNoise Gateを使うと、一定以下の小さな音を自動的にミュートできます。

  1. ボーカルトラックのインサートスロット(チャンネルストリップの左側の空欄)をクリックします。
  2. [Dynamics]→[Noise Gate]を選択して挿入します。
  3. 再生しながら、Threshold(スレッショルド)を少しずつ上げていきます。
  4. 歌っていない部分のノイズが消えつつ、歌っている部分が不自然に途切れないところで止めます。

やりすぎると語尾が切れてしまうので、少し甘めの設定にしておくのがポイントです。

EQで「サーッ」というノイズを少し抑える

マイクやオーディオインターフェイスによっては、高域に「サーッ」というノイズが載ることがあります。完全には消せませんが、EQで少しだけ抑えることができます。

  1. ボーカルトラックのインサートに、Channel EQを挿入します。
  2. 上のスペクトラムを見ながら再生し、「常にうっすら出ている帯域」を探します。
  3. 高域側(8kHz〜12kHz付近)にベル型のEQポイントを作り、-1〜-3dB程度だけカットしてみます。

ボーカルの「抜け」が悪くなってしまうこともあるので、必ずオン/オフを切り替えながら、耳でチェックして調整してください。

Flex Timeでボーカルのタイミングを揃える

次に、リズムのズレを整えるタイミング補正です。ここではFlex Time機能を使います。

Flex Timeをオンにしてタイミングを調整する手順

  1. ボーカルトラックのリージョンを選択します。
  2. トラックヘッダの[Flex]ボタンをクリックします。
  3. ポップアップから、「Flex Time - Rhythmic」または「Monophonic」を選びます(ボーカルならMonophonicが無難です)。
  4. リージョンを拡大すると、フレーズの中に小さな縦線(Flexマーカー)が表示されます。
  5. タイミングを直したい部分のFlexマーカーをドラッグし、上部のグリッド(拍の線)に合わせます。

ドラムのようにカチカチにグリッドに合わせる必要はなく、「歌として気持ちよく聞こえる範囲で」調整してあげるのがポイントです。

やりすぎを防ぐためのコツ

  • フレーズ全体ではなく、気になる単語だけをピンポイントで直す
  • 1テイクごとに、「編集前/編集後」を切り替えながら聞き比べる
  • ボーカル単体だけでなく、ドラムと一緒に再生して確認する

タイミング補正は、編集しすぎると不自然さが出やすい部分なので、「直しすぎたかな?」と思ったら少し戻すくらいの感覚がちょうどよいです。

Logic Proでのボーカル編集・実践ワークフロー例

ここまでの内容を踏まえて、実際の作業フローをまとめておきます。迷ったときは、この流れに立ち戻るようにすると、毎回同じクオリティで仕上げやすくなります。

ステップ別の作業手順

  1. テイク整理(コンピング):複数テイクを録っている場合は、良い部分だけを選んで1本のテイクにまとめます。
  2. ノイズ除去:Noise GateやEQで、常に鳴っているノイズを軽く抑えます。
  3. タイミング補正:Flex Timeで、どうしても気になるリズムのズレだけを整えます。
  4. ピッチ補正:Flex Pitchで、大きく外れている音程を中心に調整します。
  5. 全体チェック:曲全体を通して再生し、「通しで聞いて違和感がないか」を確認します。

細かいところを追い込みすぎると、時間だけがどんどん溶けていってしまうので、まずは「通して聞いて気になるところだけ直す」というルールを作っておくのもおすすめです。

編集しすぎを防ぐチェックリスト

  • 歌い手のクセやニュアンスが、消えすぎていないか?
  • すべてのノートを完璧にグリッドに合わせようとしていないか?
  • ソロ再生だけでなく、他のトラックと一緒に聞いて違和感がないか?

ボーカル編集は、「頑張った量=良い仕上がり」になりにくい作業です。あくまで曲の世界観を伝えやすくするための補助だと意識しておくと、ちょうど良いバランスで仕上げられるようになります。

まとめ:Logic Proのボーカル編集は「順番」と「やりすぎない」がカギ

最後に、この記事の内容を簡単にまとめます。

  • ボーカル編集は、ノイズ除去 → タイミング補正 → ピッチ補正の順番で進めるとスムーズ
  • Flex Pitchでは、ノートをドラッグして音程を直しつつ、ピッチ補正量は30〜50%程度から試すと自然
  • Noise GateやEQで、できる範囲でノイズを抑えつつ、やりすぎて歌がこもらないように注意
  • Flex Timeでタイミングを揃えるときも、「歌として気持ちいいかどうか」を基準にする
  • 編集は「完璧を目指しすぎない」ほうが、ボーカルの魅力が残りやすい

まずはこの記事のワークフローに沿って、1曲分のボーカルを実際に編集してみてください。慣れてきたら、自分なりの「好きな仕上がり」を基準に、設定や手順を少しずつカスタマイズしていくのがおすすめです。

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