DTM初心者向け|今すぐ音が良くなる時短ミックステク10選
こんにちは、kawaharaです。
「ミックスって難しそう…」「とりあえず音をそれっぽく良くしたい」というとき、全部を完璧にやろうとすると心が折れてしまいがちです。
そこでこの記事では、DTM初心者でも今日から使える“音を良くする時短テク”を10個に絞って紹介します。難しい理論よりも、「こう動かせばとりあえず良く聞こえる」という、現場で役立つ小技を中心にまとめました。
ミックスの専門書を1冊読むより、まずはこの10個を習慣にするほうが、仕上がりのクオリティが一気に上がることも多いです。Logic Proを例にしながら解説しますが、他のDAWでも考え方はほぼ同じです。
なお、この記事は「DTM初心者向けスターターガイド」カテゴリの基礎記事です。まずはここで時短テクの全体像を掴んでから、個別の詳しい記事で深掘りしていく流れを想定しています。
それでは、結論から順番に見ていきましょう。
時短テク1:まずは「音量バランス」を整えるだけで一気に整う
一番の時短テクは、プラグインより前にフェーダーだけでバランスを整えることです。EQやコンプを挿す前に、音量バランスが大きく崩れていると、どれだけ頑張っても仕上がりが散らかって聞こえてしまいます。
イメージとしては、料理でいう「味付け」より先に「盛り付けの量」を整えるイメージです。お皿からこぼれるほど盛っていたら、どんなソースをかけても美味しそうに見えないのと同じです。
具体的な手順(Logic Proの例)
- ミックスする前に、マスターアウト(Stereo Out)のメーターが0dBを超えないように意識する
- Logic Proの「ミキサー」(ショートカット:Xキー)を開く
- まずはキック・スネアなどドラム類のフェーダーを基準の音量に決める
- 次にベースを上げ下げして、「ドラム+ベース」の土台が気持ちよく聞こえる位置に調整
- リードメロディ(ボーカルやシンセ)を「ドラム+ベース」より少し前に感じる位置まで上げる
- パッド・コード・効果音など「背景の音」は、リードより明らかに小さめにして、邪魔しないようにする
この段階では、EQやコンプは一旦後回しでOKです。フェーダーだけで「ちゃんと曲に聞こえる」状態まで持っていけたら、その後の作業が一気に楽になります。
時短テク2:1曲だけ「リファレンス曲」を決めて真似する
次の時短テクは、毎回のミックスで“目標となる市販曲”を1曲だけ決めることです。なんとなくで音を作ると、「どこまでやればいいのか」が分からず時間だけが溶けていきます。
リファレンス曲を決めると、「この曲と比べて低音が足りないな」「ハイハットがうるさいかも」など、ゴールと現在地点の差が分かりやすくなります。
具体的な手順(Logic Proの例)
- リファレンスにしたい市販曲(WAVや高音質なファイル)を用意する
- Logic Proの新規オーディオトラックに、その曲をドラッグ&ドロップ
- リファレンストラックの出力をマスター(Stereo Out)ではなく、別のバスやアウトプットに設定して、エフェクトの影響を受けないようにする
- 自分の曲とリファレンス曲のソロボタン(S)を切り替えながら、低音・中音・高音のバランスを聞き比べる
- 「自分の曲のほうがこもってる」「シャリシャリしてる」など、ざっくりした違いを書き出してからEQやバランス調整に移る
完コピする必要はありません。“だいたい同じ方向性”に近づける意識だけでも、ミックスの迷子時間が大幅に減ります。
時短テク3:不要な低音を「ローカットEQ」で一括整理する
DTM初心者のミックスでよくあるのが、低音がモコモコして全体がこもって聞こえる状態です。原因の多くは、シンセやパッド、コーラスなど「低音がいらないパート」にも低域がたくさん残っていることです。
そこで役立つのが、「ローカット(ハイパス)EQ」です。必要ない低音をバッサリ切るだけで、音数は変えていないのにミックスがスッキリします。
具体的な手順(Logic ProのChannel EQ)
- 低音が主役ではないトラック(パッド・シンセ・SE・コーラスなど)を選択
- チャンネルストリップの最上段「EQ」部分をクリックして「Channel EQ」を開く
- 画面左端の「ハイパスフィルタ」(山型のアイコン)をオンにする
- カットする周波数を80Hz〜150Hzあたりから少しずつ上げ下げして、違和感が出ないギリギリの位置を探す
- 同じような役割のトラックには、ほぼ同じローカット設定をコピーして時短する
ベースやキックなど「低音が主役」のトラックだけはローカットを控えめにしつつ、他のパートからは積極的に低域を削ると、土台が見えやすくなります。
時短テク4:ドラムとベースは「バス」でまとめて一括処理
キック・スネア・ハイハットを1つずついじるより、ドラム全体を1本のバスにまとめて処理するほうが、短時間でまとまり感を出せます。いわば、「ドラム全員を一旦リーダーに預けて、リーダーに軽く圧をかける」イメージです。
具体的な手順(Logic Proでのドラムバス作成)
- キック・スネア・ハイハット・タムなど、ドラム関連トラックをすべて選択
- チャンネルストリップの「出力」をクリックし、「Bus 1」など空いているバスを選択
- 自動で作成された「Aux」トラックに「Drum Bus」など分かりやすい名前を付ける
- Drum Busにコンプレッサー(Logic Pro標準の「Compressor」など)を挿す
- Ratioを2:1〜4:1程度、アタックを10〜30ms程度、リリースを100〜200ms程度にし、メーターが2〜4dBほど動く程度にスレッショルドを下げる
1つ1つのトラックを細かくいじる前に、バスで軽くまとめてあげるだけで、「とりあえずドラムのノリが良くなった」状態まで一気に持っていけます。
時短テク5:リバーブは「センド1つ」でまとめて管理する
各トラックに個別でリバーブを挿してしまうと、音がバラバラの部屋で鳴っているような違和感が出やすく、CPU負荷も無駄に上がります。
そこで、1つのリバーブバスを作って、そこに各トラックから送る方法が時短かつ王道です。曲全体が同じ空間で鳴っているように感じられます。
具体的な手順(Logic Proでのリバーブセンド)
- どれか1つのトラックの「Sends」の空欄をクリックし、「Bus 2」など空いているバスを選択
- 自動で作成されたAuxトラックに「Reverb Bus」などの名前を付ける
- Reverb Busのインサートに、Space DesignerやChromaVerbなど好みのリバーブを挿す
- Reverbプラグインの「Dry/Wet(Mix)」は100% Wetに設定しておく
- ボーカルやシンセの各トラックの「Send(Bus 2など)」のノブを回し、リバーブ量を調整する
こうすることで、リバーブの質感を一括で変えられるようになり、後から「やっぱりリバーブ少し暗くしたい」などの調整も一瞬で済みます。
時短テク6:「プリセット」をスタート地点にして微調整だけする
コンプレッサーやEQをゼロから設定しようとすると、初心者にはハードルが高く、時間もかかります。そこでおすすめなのが、まずはプリセットを呼び出し、そこから少しだけ動かすというやり方です。
プリセットは、料理でいう「市販のタレ」のようなもの。そこに少しだけ塩や胡椒を足して、自分好みに寄せるイメージです。
具体的な手順(Logic Pro標準プラグイン)
- 使いたいプラグイン(CompressorやChannel EQなど)をインサートする
- プラグインウィンドウ左上の「設定」ボタン(プリセットメニュー)をクリック
- 「Voice」「Drums」「Bass」など、トラックの用途に合うカテゴリを選ぶ
- 気になったプリセットをいくつか切り替えて、印象が良いものを1つ選ぶ
- 音が大きすぎる・つぶれすぎる場合は、スレッショルドかOutput(メイクアップゲイン)のノブだけを軽く調整する
最初から完璧を狙うより、「とりあえずプリセットでそれっぽくして、足りないところだけ直す」ほうが、初心者には圧倒的に時短になります。
時短テク7:「ミックス用テンプレート」を1つ作って毎回使い回す
毎回ゼロからトラックを作って、バスを作って、リバーブやコンプを挿して…とやっていると、それだけでエネルギーを消費してしまいます。
一度、自分用のミックステンプレートを作っておけば、次回からは5分で「いつもの環境」を呼び出せるようになります。
具体的な手順(Logic Proでのテンプレート化)
- ドラムバス・リバーブバス・ディレイバスなどを作り、よく使うプラグインを軽くセットしておく
- ボーカル用・シンセ用・ベース用など、基本的なトラック構成もあらかじめ作っておく
- メニューの「ファイル > テンプレートとして保存」を選択し、「Mix Template」など分かりやすい名前を付ける
- 次回以降は「新規プロジェクト」画面のテンプレート一覧から、そのテンプレートを選ぶだけでスタートできる
テンプレートは、一度作れば作るほど得をする「貯金」のようなものです。ミックスに入るまでの準備時間を、毎回ごっそり減らせます。
時短テク8:ピアノロールやエディタを「ショートカット」で素早く開く
ミックスと直接関係ないように見えて、作業スピードを底上げしてくれるのがショートカットです。クリックの回数が減るだけでも、集中力が長持ちします。
特にLogic Proでは、「ミキサー」「ピアノロール」「インスペクタ」などの表示切り替えを覚えておくと、一気にストレスが減ります。
よく使う時短ショートカット(Logic Pro)
- Xキー:ミキサーの表示/非表示
- Pキー:ピアノロールの表示/非表示
- Iキー:インスペクタの表示/非表示
- Command+Z:直前の操作を取り消し(ミックス中の「やりすぎた!」をすぐ戻せる)
- Option+ドラッグ:プラグインや設定のコピー(同じEQ設定を別トラックに素早く複製)
最初は2〜3個だけでもOKです。よく使う画面切り替えだけでも覚えておくと、マウス移動のストレスが減り、ミックスに集中しやすくなります。
時短テク9:「メーター」を見ながらクリップとラウドネスをざっくり管理
耳だけに頼ると、「気づいたら音が割れていた」「市販曲より小さい」といったミスが起きがちです。そこで、メーターをざっくりでいいので見る習慣を付けると、トラブルを事前に防げます。
具体的なチェックポイント
- マスターアウト(Stereo Out)のメーターが0dBを超えていないか確認する
- Logic Proの「レベルメーター」のピーク値を見て、-3dB〜-6dBあたりに収まるよう全体の音量を調整
- マキシマイザーやリミッターを挿す場合は、最終段に置き、Outputを-1dB〜-0.5dBあたりに設定しておく
- リファレンス曲と自分の曲のラウドネス(体感の大きさ)を聞き比べ、「明らかに小さすぎないか」だけ確認する
本格的なラウドネス管理は専用メーターが必要ですが、初心者のうちは「赤ランプを点灯させない」「あまりにも小さすぎない」だけ意識しておけば十分です。
時短テク10:ヘッドホンとスピーカーで「2パターンだけ」チェックする
スマホ・PC・イヤホン・車…と全部でチェックしようとすると、確認だけで疲れてしまいます。そこで、最低限2パターンの環境に絞るのがおすすめです。
例えば「モニターヘッドホン」と「PCスピーカー」の2つに絞るだけでも、「低音が出すぎていないか」「高音が耳に痛くないか」をかなり判断できます。
おすすめのチェック方法
- まずはモニターヘッドホンでミックスを作り込む
- 一度バウンス(書き出し)して、PCスピーカーやノートPCの内蔵スピーカーで再生する
- 「ベースがまったく聞こえない」「ハイハットだけやたらうるさい」など、極端に気になる部分をメモ
- 再びLogic Proに戻り、気になったポイントだけピンポイントで修正する
全部の環境で完璧を目指すより、「自分の基準となる2パターンで破綻していなければOK」と割り切るほうが、時間もメンタルも守れます。
まとめ:10個全部じゃなくてOK。まずは「これだけはやる」を決めよう
ここまで、DTM初心者向けの「音を良くする時短テク」を10個紹介してきました。
- フェーダーだけで音量バランスを整える
- リファレンス曲を1つだけ決めて真似する
- 不要な低音をローカットEQで整理する
- ドラムとベースをバスでまとめて処理する
- リバーブは1つのセンドで管理する
- プリセットをスタート地点にして微調整する
- 自分用のミックステンプレートを作る
- ショートカットで表示切り替えを時短する
- メーターを見ながらクリップと音量を管理する
- 2パターンの環境だけでチェックする
いきなり全部を完璧にやる必要はありません。まずは、自分が「これだけは毎回やる」と決められるものを2〜3個ピックアップして、習慣にしてみてください。
そして慣れてきたら、この記事から別のテクニックを1つずつ足していけばOKです。ミックスは「積み重ねの経験値ゲーム」のようなものなので、焦らず少しずつアップデートしていきましょう。

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