DTM初心者向け|音圧の上げ方入門(マキシマイザー・リミッター設定ガイド)
こんにちは、kawaharaです。
この記事では、DTM初心者向けに「音圧を上げる基本」と「マキシマイザー・リミッターの使い方」を、できるだけむずかしい数式や専門用語を使わずに解説していきます。
ミックスの最後に「音圧が小さくて、他の曲と比べると全体が弱く聴こえる…」と感じたことがある方に向けて、今すぐ実践できる設定の目安も具体的な数値付きでお伝えします。
この記事はカテゴリの基礎記事です。 はじめて音圧アップに取り組む方が、迷わず「まずこの手順をやればOK」と思えるような内容を目指しています。
なお、本記事ではLogic Proを例にしつつも、他のDAWでも考え方は共通になるように解説しています。
この記事の結論と全体の流れ
最初に、この記事の結論と全体像をまとめておきます。
結論:音圧は「ミックス」+「マスターのリミッター」で決まる
ざっくり言うと、
- 各トラックのミックスで、まずバランスよく整えた音を作る
- そのあと、マスター(ステレオアウト)の最後にマキシマイザー/リミッターを1つ挿して音圧を仕上げる
という2ステップで考えるのが基本です。
この記事の流れ
この記事では、次の順番で解説していきます。
- 音圧とは何か・フェーダーで上げる音量との違い
- マキシマイザー/リミッターの役割(例え話でイメージ)
- Logic Proを例にした具体的な設定手順
- よくある失敗パターンと回避方法
- 今後のステップ(ミキシング・EQ/コンプと合わせた学び方)
それでは、順番に見ていきましょう。
音圧とは?フェーダーで上げる音量との違い
まずは、「そもそも音圧ってなに?」というところから整理します。
音圧=“ギュッと詰まった聴こえ方”のこと
音圧は、かんたんに言うと耳で聴いたときの「詰まっている感じ」「押してくる感じ」です。
たとえば、スマホで市販曲と自作曲を続けて再生したとき、
- 市販曲:小さい音量でも、ドラムやベースがしっかり前に出てくる
- 自作曲:マスターフェーダーを上げても、なんだかスカスカして弱く感じる
という差が出ているなら、それは音圧の違いが原因のひとつです。
フェーダーを上げるだけではダメな理由
ミキサーのマスターフェーダーを上げれば、当然音量は大きくなります。でも、一定以上上げると、
- ピークが0dBを超えてクリップ(割れ)が発生する
- メーターは真っ赤なのに、聴いた印象はそこまで太くならない
という状態になります。これを避けながら音を「詰まって」聴かせるために使うのが、
- リミッター
- マキシマイザー
と呼ばれるプラグインです。
マキシマイザー・リミッターの役割をイメージで理解する
ここでは、むずかしい理論よりも、イメージで理解できるように説明します。
リミッター=天井、マキシマイザー=床ごと持ち上げる道具
リミッターとマキシマイザーは、どちらも「音が一定以上大きくなりすぎないようにする」ツールです。
部屋の中に人がジャンプしているイメージで考えると、
- リミッター:天井を決めて、それ以上ジャンプしても頭をぶつけないように押さえる
- マキシマイザー:天井の位置は決めつつ、床ごとグーッと持ち上げて、部屋全体の高さを効率よく使う
というイメージです。どちらも役割は似ていて、最近は「マキシマイザー機能付きリミッター」も多く、名前が多少違ってもやっていることはほぼ同じだと思ってOKです。
どこに挿す?:基本はマスター(ステレオアウト)の最後
音圧アップ用のリミッター/マキシマイザーは、
- マスタートラック(Logic Proだと「ステレオアウト」)
- 一番最後のインサートスロット
に挿すのが基本です。こうすることで、
- 曲全体のピークを監視しながら、まとめて音圧を上げられる
- 0dBを超えて音が割れてしまうのを防げる
というメリットがあります。
Logic Proを例にした音圧アップの具体的手順
ここからは、Logic Proを例に「どこをクリックして、何を設定するか」を具体的に見ていきます。
手順1:ステレオアウトの最後にリミッターを挿す
まずは、曲全体にかかるリミッターをセットします。
- 1)ミキサーを開く … 上部メニューの「表示」→「ミキサーを表示」、またはショートカット「X」キー
- 2)いちばん右の「ステレオアウト」チャンネルを探す
- 3)そのチャンネルのインサートスロットの一番下の空きスロットをクリック
- 4)「ダイナミクス」→「Limiter」もしくは「Adaptive Limiter」を選択
最初はLogic標準の「Adaptive Limiter」を使うと分かりやすいです。
手順2:アウトプット(Ceiling)を安全な値に設定する
次に、「天井」にあたるアウトプットレベル(Ceiling)を決めます。
- 1)Adaptive Limiterの画面を開く
- 2)「Output Ceiling」や「Out Ceiling」と書かれたノブを探す
- 3)値を-1.0 dB 〜 -0.8 dBあたりに設定する
配信サービス用のマスターでは、-1.0dBあたりにしておくのが安全です。0dBギリギリまで詰めるよりも、少し余裕を残すイメージでOKです。
手順3:入力ゲイン(Gain)で音圧を少しずつ上げる
次に、音をどれくらい持ち上げるかを決めます。ここが「音圧」のコントロール部分です。
- 1)Adaptive Limiterの「Gain」ノブを確認
- 2)再生しながら、少しずつ(+1dBずつくらい)上げていく
- 3)メーターの「Reduction(リダクション)」がだいたい 2〜4dB くらい動くあたりを目安にする
Reductionが大きくなりすぎる(常に6〜8dB以上削られている)と、
- アタックが潰れてノッペリした音になる
- キックやスネアが前に出てこない
などの副作用が出やすくなります。最初は「ちょっと物足りないかな?」くらいの控えめな音圧からスタートするのがおすすめです。
手順4:ラウドネスメーターでLUFSをざっくり確認
もしLogicのメーターやプラグインでLUFSを確認できる場合は、次のような目安を意識してみてください。
- ポップス/Kawaii系:だいたい-14 〜 -10 LUFSくらい
- ローファイ寄り:やや抑えめで-18 〜 -14 LUFSくらい
数値はあくまで目安なので、「他の曲と並べて聴いたときの感じ」をいちばん大事にしてください。
初心者がやりがちな失敗と、その直し方
音圧アップは、やり方を間違えるとすぐに「聴きづらい音」になってしまいます。ここでは、よくある失敗パターンと直し方をまとめます。
失敗1:音がペタッとして、モコモコになる
Gainを上げすぎてリミッターが常に仕事をし続けていると、
- ドラムのアタックが潰れる
- ボーカルの抑揚が平らになる
- 全体がモコモコ・モワッとした印象になる
といった症状が出ます。この場合は、
- まずGainを少し下げる(1〜2dB)
- ドラムやベースの元のミックスを見直して、不要な低域をカットする
など、音圧ではなくミックスそのものを整える方向で調整してみてください。
失敗2:音圧を上げても、なぜかまだ小さく感じる
Gainを上げても全然大きくなった気がしない場合、次のポイントを確認してみましょう。
- マスターフェーダーがかなり下がっていないか
- 各トラックのレベルが低すぎて、そもそもリミッターに十分な入力が来ていない
- キックやベースが弱く、音の芯が足りない
音圧アップはあくまで「最後の仕上げ」です。元のミックス段階で、
- ドラム・ベースのバランス
- ボーカルの聞こえやすさ
が整っていないと、リミッターだけではどうしても限界があります。
失敗3:「市販曲レベル」を最初から狙いすぎる
最初から市販曲並みの音圧を目指すと、
- Gainを上げすぎてヘトヘトな音になる
- 耳が疲れて判断ができなくなる
という沼にハマりがちです。
最初のうちは、
- 市販曲より少し小さいくらいでもOKと割り切る
- 「音質が崩れていないか」「キックやスネアがちゃんと前に出ているか」を優先してチェック
という意識で進めてみてください。
まとめ:音圧アップは「最後のひと押し」くらいがちょうどいい
最後に、この記事のポイントをまとめます。
この記事のポイントおさらい
- 音圧=「耳で感じる詰まり具合」であり、単純な音量アップとは別物
- マキシマイザー/リミッターは天井を決めて、その手前まで音を押し上げる道具
- 基本はマスター(ステレオアウト)の最後に1つだけ挿す
- Logic Proなら、Adaptive Limiterで「Output Ceiling -1.0dB前後」「Reduction 2〜4dB前後」を目安に
- それでもうまくいかないときは、元のミックス(EQ・コンプ・バランス)を見直す
音圧アップは魔法のボタンではなく、あくまでミックスの完成度を引き出すための最後のひと押しです。この記事を読みながら、少しずつ自分の曲で試してみてください。
次のステップとして、
- ミックスの基礎(音量バランス・パン・ステレオ配置)
- EQ・コンプレッサーの使い方
- Logic Proでのミックス全体の考え方
を合わせて学んでいくと、音圧アップの効果もさらに感じやすくなります。

コメント
コメントを投稿