Logic Proマスタリング入門|リミッター・EQ・ラウドネスの基本設定ガイド
こんにちは、kawaharaです。
この記事では、Logic Proでのマスタリングの基本ステップ(リミッター・EQ・ラウドネスの確認)を、初心者向けにやさしく解説していきます。
マスタリングと聞くと「プロのエンジニアがやる難しそうな作業」というイメージがあるかもしれませんが、DTM初心者でも最低限おさえておきたいポイントを押さえれば、「小さい・こもっている・バラついている」といった悩みをかなり減らせます。
ここでは難しい理論よりも、Logic Pro標準プラグインを使った実践的な手順をメインに解説します。
なお、この記事はカテゴリの基礎記事です。まずはこの内容を押さえておくことで、今後より細かいマスタリングやプラグインの知識がスムーズに理解しやすくなります。
結論から言うと、Logic Proでのマスタリングは次の流れを押さえればOKです。
- マスタリング前提のミックスを用意する(ステレオアウトでクリップさせない)
- ステレオアウトにEQ → リミッター → ラウドネスメーターの順で挿す
- ラウドネス(LUFS)とピーク値を確認しながら音量を調整する
- 仕上がった2Mixを、配信や書き出し目的に合わせてバウンスする
この流れに沿って、理由 → 実際の操作 → 設定の目安 という順番で見ていきましょう。
マスタリングとは?まずは結論から理解する
まず結論として、マスタリングは「完成したミックスを、いろいろな再生環境で聴きやすい1本の音源に整える最終工程」です。
イメージとしては、すでにできあがった写真に「最終仕上げのフィルター」をかけて、明るさやコントラストを整える作業に近いです。レコーディングやミックスで「素材」を作り込み、マスタリングで音量・バランス・聴きやすさを仕上げます。
Logic Proにおけるマスタリングの位置づけ
Logic Proでは、「Stereo Out(ステレオアウト)」トラックがマスタリングの作業場所になります。すべてのトラックの音が最終的にこのステレオアウトに集まり、そこでEQやリミッター、メーターをかけて仕上げるイメージです。
そのため、個別トラックやバスでの細かい処理(ミックス)は別記事で扱いつつ、このステレオアウトに何をどう挿すのかを理解することが、マスタリングの第一歩になります。
この記事でできるようになること
この記事を読み終えると、次のようなことができるようになることを目指しています。
- Logic Proのステレオアウトに必要なプラグインを正しい順番で挿せる
- リミッターの「音を大きくするが、割れさせない」という役割を体感的に理解できる
- EQで低域・高域を軽く整えて、聴きやすいバランスに近づけられる
- ラウドネスメーターを見ながら、おおまかな音量の目安をつかめる
準備編|マスタリング前にチェックしておきたいポイント
結論として、マスタリング前のミックスが整っているほど、マスタリングはシンプルで済みます。ここでは最低限チェックしたいポイントを確認します。
ステレオアウトがクリップしていないか確認する
まずはミックス段階で、ステレオアウトが赤く点灯(クリップ)していないかを確認しましょう。
- ① Logic Proでマスタリングしたいプロジェクトを開く
- ② キーボードのXキーでミキサーを表示する
- ③ 右端にある「Stereo Out」チャンネルを確認する
- ④ 曲の一番盛り上がるところを再生し、メーターが0 dBを超えて赤く点灯しないかチェックする
もしクリップしている場合は、ステレオアウトのフェーダーをいったん下げるか、主要なバスやトラックの音量を少し下げて、ピークが-6 dB前後に収まるようにしておきましょう。
マスタリング前にざっとチェックしておきたいこと
- ボーカルやメイン楽器が、しっかり前に出て聴こえるか
- 低音が出すぎてモコモコしていないか
- ハイハットやシンバルが耳に痛くないか
- 曲の最初と最後で、急に音量が変わっていないか
ここで完璧を目指す必要はありませんが、明らかに気になるところがあれば、マスタリング前にミックス側で軽く修正しておくと、後の作業がスムーズになります。
リミッターの基本|音を大きくしつつ割れを防ぐ
結論として、Logic Proでまず覚えたいマスタリングツールは「Adaptive Limiter」です。これをステレオアウトの最後段に挿すことで、音を大きくしつつクリッピングを防げます。
リミッターは、車でいう「スピードリミッター」のようなもので、「この高さ以上の音量は出さないよ」という上限を決める役割があります。そのうえで入力ゲインを上げていくことで、聴感上の音量を上げていきます。
ステレオアウトにAdaptive Limiterを挿す手順
- ① ミキサー(Xキー)を開き、「Stereo Out」チャンネルを探す
- ② 「Stereo Out」の空いているインサートスロットをクリックする
- ③ メニューからDynamics > Adaptive Limiterを選ぶ
- ④ プラグインウィンドウが表示されたら、画面右上の「On」が有効になっているか確認する
基本的には、EQなど他の処理の「最後」にリミッターを挿すのがおすすめです。
初心者におすすめのリミッター設定値の目安
まずは下記のような設定をスタートポイントにしてみてください。
- Output Ceiling(アウトプット上限):-1.0 dB
- Lookahead:デフォルトのままでOK
- Gain(入力ゲイン):曲を再生しながら少しずつ上げ、メーターのGain Reductionが-3〜-5 dB程度に収まるくらいを目安にする
Gain Reductionが-8 dB以上など大きく動くようであれば、音がつぶれすぎて不自然になりやすいので、ゲインを少し戻してあげると良いです。
リミッターをかけすぎているときのサイン
- 曲の勢いはあるのに、音の「抜け」が悪く感じる
- キックやスネアが「ドン」ではなく「ボフッ」とつぶれたように聴こえる
- サビで急に耳が疲れる感じがする
こういったときは、一度リミッターをBypassして、ON/OFFを聴き比べてみるのがおすすめです。「ONのほうが少し大きく・まとまって聴こえる」程度に留めると、自然な仕上がりになりやすくなります。
EQで全体のバランスを微調整するコツ
結論として、マスタリングでのEQは「大きくいじらない」が基本です。ミックスの問題を根本から直すのではなく、全体の傾向を軽く整えるイメージで使います。
ステレオアウトにChannel EQを挿す手順
- ① 「Stereo Out」のインサートスロットをクリック
- ② EQ > Channel EQを選択
- ③ プラグインウィンドウが開いたら、分析(Analyzer)をONにしておくと視覚的に把握しやすい
EQは、基本的にリミッターの「前」に挿すようにしましょう。EQで音のバランスを整え、その結果をリミッターで受け止めるイメージです。
マスタリングでよく使うEQ処理の例
- 超低域のカット(High Pass Filter) → 20〜30 Hz付近をゆるやかにカットして、不要な「ゴゴゴ」という揺れを軽減
- 低域の整理(100〜200 Hz) → モコモコする場合は、-1〜-2 dBだけ軽くカット
- 中高域の明るさ調整(4〜8 kHz) → こもっていれば+1〜+2 dB、うるさければ逆に少しカット
- 空気感の付与(10 kHz以上) → 曲によっては、10〜12 kHz付近を+1 dB程度ブーストして、少しだけ抜け感を足す
いずれも、+/- 1〜2 dB程度の「ほんの少し」を意識するのがポイントです。大きく動かしたくなったときは、ミックス段階を見直したほうが結果的に早道になります。
EQでやりすぎないためのチェック
- EQのON/OFFをこまめに切り替えて、どちらが自然に聴こえるか確認する
- 小さい音量・普通の音量・少し大きめ、それぞれで聴き比べてみる
- イヤホン・スピーカー・スマホスピーカーなど、複数環境でざっくり確認する
「EQをかけたほうがわずかに聴きやすいかな」くらいの違いに収まっていると、マスタリングとしては良いバランスになりやすいです。
ラウドネスを確認する|LUFSとピーク値の目安
結論として、マスタリングでは「どれくらいの大きさに仕上がっているか」を数字でも確認すると、失敗が減ります。Logic Pro標準のラウドネスメーターを使うことで、LUFSという単位で音量の目安を見られます。
ラウドネスメーターを表示する手順
- ① 「Stereo Out」のインサートスロットをクリック
- ② Metering > Loudness Meterを選択
- ③ プラグインウィンドウを開き、曲の頭から最後まで通して再生する
- ④ 「Integrated」や「Short Term」の値を確認する
「Integrated」は曲全体の平均的なラウドネスを示し、「Short Term」はその時点の短い区間のラウドネスを示します。まずはIntegratedの目安を把握しておくとわかりやすいです。
ストリーミング向けラウドネスのざっくり目安
配信サービスごとに最適値は少しずつ違いますが、初心者向けには次のような目安で考えておくと良いです(あくまで参考値です)。
- Integrated LUFS:-14 〜 -10 LUFSあたり
- True Peak:-1.0 dBFS程度に収まるようにする
リミッターのGainを上げすぎてLUFSが-8付近やそれ以上になってくると、曲によっては聞き疲れしやすくなることもあるので、リファレンス曲と聴き比べながら調整してみてください。
リファレンス曲と比較しながら調整する
- ① 好きなアーティストや目標とするジャンルの曲を、Logic Proにインポートする
- ② 自分の曲とリファレンス曲を交互に再生し、音量やバランスの違いを確認する
- ③ ラウドネスメーターの値も見ながら、おおまかに近い数字になるよう調整する
数字はあくまで目安なので、最終的には「耳で聴いて気持ちいいか」を大切にしてOKです。
マスタリング後の書き出し|バウンス設定の基本
結論として、マスタリングした2Mixは「WAVで高音質バージョン」と「必要に応じてMP3などの配布用」を用意しておくと安心です。
Logic Proでバウンスする手順
- ① メニュー上部から「ファイル」>「バウンス」>「プロジェクトまたはセクション…」を選択 (ショートカット:⌘ + B)
- ② 書き出し範囲(開始位置・終了位置)を確認する
- ③ 「ファイル形式」をPCM(WAV)に設定
- ④ サンプルレートはプロジェクトと同じ値(例:44.1 kHz)、ビット深度は24 bitを目安に設定
- ⑤ 必要に応じて、別途MP3にもチェックを入れて同時書き出し
配信サービスにアップロードするときは、多くの場合WAV(16 bit or 24 bit)のアップロードが推奨されているので、まずはWAVのマスター音源を大事に保管しておきましょう。
書き出し後に軽く確認しておきたいこと
- 書き出したファイルを、Macのミュージックアプリなど別ソフトで再生して問題ないか確認
- スマホに転送してイヤホンで聴いてみる
- 音量が極端に小さすぎたり、大きすぎて割れていないかチェックする
まとめ|まずはシンプルなチェーンでLogic Proマスタリングに慣れよう
最後に、本記事の内容を簡単に振り返っておきます。
- マスタリングは「完成したミックスを1本の音源として整える最終工程」
- Logic Proでは「Stereo Out」にEQ・リミッター・ラウドネスメーターを挿して作業する
- リミッター(Adaptive Limiter)は、音を大きくしつつピークを抑える「安全装置」
- EQはマスタリングでは小さな調整に留めるのが基本
- ラウドネス(LUFS)とピーク値を確認して、配信向けの目安に近づける
- 仕上がった2MixはWAV(24 bit)でバウンスし、必要に応じてMP3も作る
最初から完璧なマスタリングを目指す必要はありません。まずは「EQ → リミッター → ラウドネスメーター」というシンプルなチェーンで、少しずつ自分の曲の「仕上げ方」を体に覚えさせていくイメージで大丈夫です。
慣れてきたら、別記事で紹介しているミックスの基礎やサイドチェイン、プラグインの活用方法と組み合わせて、より自分らしいサウンドを追求していきましょう。

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